テーブル定義

この章では、Scala コードでデータベーススキーマを扱う方法、特に既存のデータベースなしでアプリケーションを書き始めるときに便利な、手動でスキーマを記述する方法について説明します。すでにデータベースにスキーマがある場合は、code generator を使ってこの作業を省略することもできます。

以下のコード例では、以下のimportを想定しています。

import ldbc.core.*
import ldbc.core.attribute.*

LDBCは、Scalaモデルとデータベースのテーブル定義を1対1のマッピングで管理します。モデルが保持するプロパティとテーブルが保持するカラムのマッピングは、定義順に行われます。テーブル定義は、Create文の構造と非常によく似ています。このため、テーブル定義の構築はユーザーにとって直感的なものとなります。

LDBC は、このテーブル定義をさまざまな目的で使用します。型安全なクエリの生成、ドキュメントの生成など。

case class User(
  id: Long,
  name: String,
  age: Option[Int],
)

val table = Table[User]("user")(                     // CREATE TABLE `user` (
  column("id", BIGINT, AUTO_INCREMENT, PRIMARY_KEY), //   `id` BIGINT NOT NULL AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
  column("name", VARCHAR(255)),                      //   `name` VARCHAR(255) NOT NULL,
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None)),         //   `age` INT unsigned DEFAULT NULL
)                                                    // );

すべてのカラムはcolumnメソッドで定義されます。各カラムにはカラム名、データ型、属性があります。以下のプリミティブ型が標準でサポートされており、すぐに使用できます。

Null可能な列はOption[T]で表現され、Tはサポートされるプリミティブ型の1つです。Option型でない列はすべてNot Nullであることに注意してください。

データ型

モデルが持つプロパティのScala型とカラムが持つデータ型の対応付けは、定義されたデータ型がScala型をサポートしている必要があります。サポートされていない型を割り当てようとするとコンパイルエラーが発生します。

データ型がサポートするScalaの型は以下の表の通りです。

Data Type Scala Type
BIT Byte, Short, Int, Long
TINYINT Byte, Short
SMALLINT Short, Int
MEDIUMINT Int
INT Int, Long
BIGINT Long, BigInt
DECIMAL BigDecimal
FLOAT Float
DOUBLE Double
CHAR String
VARCHAR String
BINARY Array[Byte]
VARBINARY Array[Byte]
TINYBLOB Array[Byte]
BLOB Array[Byte]
MEDIUMBLOB Array[Byte]
LONGBLOB Array[Byte]
TINYTEXT String
TEXT String
MEDIUMTEXT String
DATE java.time.LocalDate
DATETIME java.time.Instant, java.time.LocalDateTime, java.time.OffsetTime
TIMESTAMP java.time.Instant, java.time.LocalDateTime, java.time.OffsetDateTime, java.time.ZonedDateTime
TIME java.time.LocalTime
YEAR java.time.Instant, java.time.LocalDate, java.time.Year
BOOLEA Boolean

整数型を扱う際の注意点

符号あり、符号なしに応じて、扱えるデータの範囲がScalaの型に収まらないことに注意する必要があります。

Data Type Signed Range Unsigned Range Scala Type Range
TINYINT -128 ~ 127 0 ~ 255 Byte<br>Short -128 ~ 127<br>-32768~32767
SMALLINT -32768 ~ 32767 0 ~ 65535 Short<br>Int -32768~32767<br>-2147483648~2147483647
MEDIUMINT -8388608 ~ 8388607 0 ~ 16777215 Int -2147483648~2147483647
INT -2147483648 ~ 2147483647 0 ~ 4294967295 Int<br>Long -2147483648~2147483647<br>-9223372036854775808~9223372036854775807
BIGINT -9223372036854775808 ~ 9223372036854775807 0 ~ 18446744073709551615 Long<br>BigInt -9223372036854775808~9223372036854775807<br>...

ユーザー定義の独自型やサポートされていない型を扱う場合は、カスタム型 を参照してください。

属性

カラムにはさまざまな属性を割り当てることができます。

キーの設定

MySQLではテーブルに対してUniqueキーやIndexキー、外部キーなどの様々なキーを設定することができます。LDBCで構築したテーブル定義でこれらのキーを設定する方法を見ていきましょう。

PRIMARY KEY

主キー(primary key)とはMySQLにおいてデータを一意に識別するための項目のことです。カラムにプライマリーキー制約を設定すると、カラムには他のデータの値を重複することのない値しか格納することができなくなります。また NULL も格納することができません。その結果、プライマリーキー制約が設定されたカラムの値を検索することで、テーブルの中でただ一つのデータを特定することができます。

LDBCではこのプライマリーキー制約を2つの方法で設定することができます。

  1. columnメソッドの属性として設定する
  2. tableのkeySetメソッドで設定する

columnメソッドの属性として設定する

columnメソッドの属性として設定する方法は非常に簡単で、columnメソッドの第3引数以降にPRIMARY_KEYを渡すだけです。これによって以下の場合 idカラムを主キーとして設定することができます。

column("id", BIGINT, AUTO_INCREMENT, PRIMARY_KEY)

tableのkeySetメソッドで設定する

LDBCのテーブル定義には keySetというメソッドが生えており、ここでPRIMARY_KEYに主キーとして設定したいカラムを渡すことで主キーとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => PRIMARY_KEY(table.id))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   PRIMARY KEY (`id`)
// )

PRIMARY_KEYメソッドにはカラム意外にも以下のパラメーターを設定することができます。

複合キー (primary key)

1つのカラムだけではなく、複数のカラムを主キーとして組み合わせ主キーとして設定することもできます。PRIMARY_KEYに主キーとして設定したいカラムを複数渡すだけで複合主キーとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => PRIMARY_KEY(table.id, table.name))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   PRIMARY KEY (`id`, `name`)
// )

複合キーはkeySetメソッドでのPRIMARY_KEYでしか設定することはできません。仮に以下のようにcolumnメソッドの属性として複数設定を行うと複合キーとしてではなく、それぞれを主キーとして設定されてしまいます。

LDBCではテーブル定義に複数PRIMARY_KEYを設定したとしてもコンパイルエラーにすることはできません。しかし、テーブル定義をクエリの生成やドキュメントの生成などで使用する場合エラーとなります。これはPRIMARY KEYはテーブルごとに1つしか設定することができないという制約によるものです。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT, PRIMARY_KEY),
  column("name", VARCHAR(255), PRIMARY_KEY),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)

// CREATE TABLE `user` (
//   `id` BIGINT AUTO_INCREMENT PRIMARY KEY,
// )

UNIQUE KEY

一意キー(unique key)とはMySQLにおいてデータを一意に識別するための項目のことです。カラムに一意性制約を設定すると、カラムには他のデータの値を重複することのない値しか格納することができなくなります。

LDBCではこの一意性制約を2つの方法で設定することができます。

  1. columnメソッドの属性として設定する
  2. tableのkeySetメソッドで設定する

columnメソッドの属性として設定する

columnメソッドの属性として設定する方法は非常に簡単で、columnメソッドの第3引数以降にUNIQUE_KEYを渡すだけです。これによって以下の場合 idカラムを一意キーとして設定することができます。

column("id", BIGINT, AUTO_INCREMENT, UNIQUE_KEY)

tableのkeySetメソッドで設定する

LDBCのテーブル定義には keySetというメソッドが生えており、ここでUNIQUE_KEYに一意キーとして設定したいカラムを渡すことで一意キーとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => UNIQUE_KEY(table.id))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   UNIQUE KEY (`id`)
// )

UNIQUE_KEYメソッドにはカラム意外にも以下のパラメーターを設定することができます。

複合キー (unique key)

1つのカラムだけではなく、複数のカラムを一意キーとして組み合わせ一意キーとして設定することもできます。UNIQUE_KEYに一意キーとして設定したいカラムを複数渡すだけで複合一意キーとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => UNIQUE_KEY(table.id, table.name))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   UNIQUE KEY (`id`, `name`)
// )

複合キーはkeySetメソッドでのUNIQUE_KEYでしか設定することはできません。仮にcolumnメソッドの属性として複数設定を行うと複合キーとしてではなく、それぞれを一意キーとして設定されてしまいます。

INDEX KEY

インデックスキー(index key)とはMySQLにおいて目的のレコードを効率よく取得するための「索引」のことです。

LDBCではこのインデックスを2つの方法で設定することができます。

  1. columnメソッドの属性として設定する
  2. tableのkeySetメソッドで設定する

columnメソッドの属性として設定する

columnメソッドの属性として設定する方法は非常に簡単で、columnメソッドの第3引数以降にINDEX_KEYを渡すだけです。これによって以下の場合 idカラムをインデックスとして設定することができます。

column("id", BIGINT, AUTO_INCREMENT, INDEX_KEY)

tableのkeySetメソッドで設定する

LDBCのテーブル定義には keySetというメソッドが生えており、ここでINDEX_KEYにインデックスとして設定したいカラムを渡すことでインデックスキーとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => INDEX_KEY(table.id))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   INDEX KEY (`id`)
// )

INDEX_KEYメソッドにはカラム意外にも以下のパラメーターを設定することができます。

複合キー (index key)

1つのカラムだけではなく、複数のカラムをインデックスキーとして組み合わせインデックスキーとして設定することもできます。INDEX_KEYにインデックスキーとして設定したいカラムを複数渡すだけで複合インデックスとして設定することができます。

val table = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None))
)
  .keySet(table => INDEX_KEY(table.id, table.name))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   INDEX KEY (`id`, `name`)
// )

複合キーはkeySetメソッドでのINDEX_KEYでしか設定することはできません。仮にcolumnメソッドの属性として複数設定を行うと複合インデックスとしてではなく、それぞれをインデックスキーとして設定されてしまいます。

FOREIGN KEY

外部キー(foreign key)とは、MySQLにおいてデータの整合性を保つための制約(参照整合性制約)です。 外部キーに設定されているカラムには、参照先となるテーブルのカラム内に存在している値しか設定できません。

LDBCではこの外部キー制約をtableのkeySetメソッドを使用する方法で設定することができます。

val post = Table[Post]("post")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT, PRIMARY_KEY),
  column("name", VARCHAR(255))
)

val user = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None)),
  column("post_id", BIGINT[Long])
)
  .keySet(table => FOREIGN_KEY(table.postId, REFERENCE(post, post.id)))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   FOREIGN KEY (`post_id`)  REFERENCES `post` (`id`)
// )

FOREIGN_KEYメソッドにはカラムとReference値意外にも以下のパラメーターを設定することができます。

外部キー制約には親テーブルの削除時と更新時の挙動を設定することができます。REFERENCEメソッドにonDeleteonUpdateメソッドが提供されているのでこちらを使用することでそれぞれ設定することができます。

設定することのできる値はldbc.core.Reference.ReferenceOptionから取得することができます。

val user = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None)),
  column("post_id", BIGINT[Long])
)
  .keySet(table => FOREIGN_KEY(table.postId, REFERENCE(post, post.id).onDelete(Reference.ReferenceOption.RESTRICT)))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   FOREIGN KEY (`post_id`)  REFERENCES `post` (`id`) ON DELETE RESTRICT
// )

設定することのできる値は以下になります。

複合キー (foreign key)

1つのカラムだけではなく、複数のカラムを外部キーとして組み合わせて設定することもできます。FOREIGN_KEYに外部キーとして設定したいカラムを複数渡すだけで複合外部キーとして設定することができます。

val post = Table[Post]("post")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT, PRIMARY_KEY),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("category", SMALLINT[Short])
)

val user = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None)),
  column("post_id", BIGINT[Long]),
  column("post_category", SMALLINT[Short])
)
  .keySet(table => FOREIGN_KEY((table.postId, table.postCategory), REFERENCE(post, (post.id, post.category))))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   FOREIGN KEY (`post_id`, `post_category`)  REFERENCES `post` (`id`, `category`)
// )

制約名

MySQLではCONSTRAINTを使用することで制約に対して任意の名前を付与することができます。この制約名はデータベース単位で一意の値である必要があります。

LDBCではCONSTRAINTメソッドが提供されているのでキー制約などの制約を設定する処理をCONSTRAINTメソッドに渡すだけで設定することができます。

val user = Table[User]("user")(
  column("id", BIGINT[Long], AUTO_INCREMENT),
  column("name", VARCHAR(255)),
  column("age", INT.UNSIGNED.DEFAULT(None)),
  column("post_id", BIGINT[Long])
)
  .keySet(table => CONSTRAINT("fk_post_id", FOREIGN_KEY(table.postId, REFERENCE(post, post.id))))

// CREATE TABLE `user` (
//   ...,
//   CONSTRAINT `fk_post_id` FOREIGN KEY (`post_id`)  REFERENCES `post` (`id`)
// )